古い話になりますが、私がダンナ様と婚約中の頃、お高めなフレンチレストランでディナーをした時のことです。
メインの肉料理に合わせて、ワインリストから赤ワインを選んだ彼。
テイスティングて、ちょっと顔をしかめました。
すると、ソムリエがすかさず「デキャンタージュいたしましょう。」とボトルのワインをデキャンタに移し替えたのです。
2度目のテイスティングでは、彼の顔は驚きと喜びでニコニコ。
赤ワインは渋みが苦手で敬遠がちだった私もおいしく頂けて、婚約時代の素敵な思い出になりました。
ソムリエがしてくれた「デキャンタージュ」。
ワインをデキャンタに移し替えるだけで、その味を一変させてしまう「すご技」。
何でそんなことになるのか不思議で、調べてみました。
ワインの熟成過程や性質をを知れば、そういう事なのかと納得。
ワインがさらにおいしくなるための、ちょっとした手助けだったのです。
ボトルからデキャンタに移すだけなので、コツが分かれば誰にでもできます。
このデキャンタージュをマスターすれば、おうちにあるワインも上等な味になりますよ。
今回は、ワインのデキャンタージュとはどういうものなのか、分かりやすく紹介します。
ワインのデキャンタージュとは?
デキャンタージュとは、「デキャンタ」と呼ばれる専用のガラス容器にボトルのワインを移し替えることをいいます。
上の画像で、テーブルの真ん中にある、ワインが入れられているものが「デキャンタ」です。
ボトル1本以上のワインが入るようになっているので、なかなかの容量なんですよ。
ワインをデキャンタージュするのには、いくつか理由があります。
あれって、ソムリエをカッコよく見せるパフォーマンスじゃないの?
違います
レストランのサービスで、ディナーを盛り上げる演出に行う場合もありますが、そもそも、ワインをもっとおいしくするための技なんですよ。
ボトルのワインをデキャンタージュする目的について、紹介しましょう。
デキャンタージュの目的
ワインをデキャンタージュするのには、
- 古いワインから澱(おり)を取り除く
- ワインを空気に触れさせて、味と香りをよくする
- ワインの温度を適温に上げる
という3つの目的があります。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
澱(おり)を取り除いてワインすっきり
年代物の赤ワインをよく見ると、ボトルの底に何かもやもやした黒い塊が沈んでいることがあります。
これは、「澱(おり)」といって、ワインが熟成してできた、ワインの渋みと色素の結晶です。
ボトル詰めされて間もない赤ワインは、フルーティーな味わいが楽しめますが、渋みが強いことも。
時間をかけて熟成されたワインは、この渋みとブドウの色素が酸素によって結晶化し、渋みが抜けて洗練された味わいになります。
澱は、ワインがよりおいしくなったというサインでもありますね。
へー。じゃあ、いいワインになればなるほど澱が多いって事ね。
ところでこの澱、人体には無害ですがビックリするほど渋く、舌ざわりもザラザラするので、口に含んだ時に違和感が。
せっかくおいしくなったワインが、注ぐときに澱が入ってしまうと残念な味になってしまいます。
ここで、デキャンタージュ。
底に沈んだ澱を残して、ワインの上澄みだけをデキャンタに移せば、渋みもザラザラも心配ご無用。
デキャンタージュすれば、熟成したワインのまろやかで華やかな味と香りを楽しむことができます。
残念なワインが素敵に変身
ワインがおいしくなる条件に、「酸素」がかなりのウエイトを占めています。
ワインをまろやかにする「澱(おり)」を作り出すのも酸素ですが、ワイン独特の香りも、酸素に触れることで花が開くように広がります。
ワインにとって、酸素は欠かせない存在なんです。
ボトル詰めされたワインは、ボトルの中のわずかな酸素に触れることでゆっくりと熟成されていきます。
しかし、中には、コルク栓の密度が高いため酸素が不足して、酸欠を起こすワインも。
栓を開けた時に、硫黄や玉ねぎの腐ったような臭いがする時は、酸欠になっている証拠です。
こんな時は、デキャンタージュでワインを酸素に触れさせてあげると、嫌な臭い(還元臭という)が薄くなってワイン本来の香りになります。
ワインが腐ったわけじゃないんだ。
そのワインどうしたの?
───捨てた。
もったいない事を……
話を変えましょう。
先ほど、ワインは酸素に触れて熟成すると説明しました。
熟成期間の短い若い(ラベルに書かれている年代が新しい)ワインを飲み頃にするために、デキャンタージュすることもあります。
わかった!酸素に触れさせて一気に熟成させるのね。
ご名答。
デキャンタージュで渋みもやわらぐから、若いワインでもまろやかな味になります。
少し残念な味のワインでも、デキャンタージュすることで味や香りがよくなっておいしく変身するので、諦めるのは早いですよ。
冷えたワインはデキャンタージュで復活
ワインに限らず、「お酒は冷えている方が好き」という人は多いですね。
でも、ワインは冷やし過ぎると寒さで縮こまってしまい、あまり香りがしない場合も。
こんな時も、デキャンタージュが有効です。
デキャンタージュしてワインの温度を室温に近づけさせると、ワインの香りが復活します。
ワインて、キンキンに冷やしちゃいけないのね。
ビールじゃないんだから。
香りも味のうち、と楽しみたい場合にはデキャンタージュがおすすめですよ。
デキャンタージュには向き不向きがある
デキャンタージュすると、ワインがぐっとおいしくなることが分かりました。
しかし、ワインなら何でもデキャンタージュすればいい、という訳ではありません。
デキャンタージュしたら、ワインの持ち味が無くなってしまう種類もあります。
どんなワインがデキャンタージュしてはいけないのか、確認しておきましょう。
デキャンタージュしてはいけないワイン
デキャンタージュをしてはいけないワインは、次の2つです。
- ピノ・ノワール
- スパークリングワイン
ピノ・ノワールは、ベリー系の甘い香りで渋みが少なく、赤ワインの中でも飲みやすい種類です。
ピノ・ノワールって、原料のブドウ品種の名前なのね。
ブドウ自体すごくデリケートで、ワインの味味も繊細なのが人気です。
ピノ・ノワールは、長い時間酸素に触れていると、かえって香りが薄くなって味も落ちてしまうので、デキャンタージュには向きません。
また、シャンパンに代表されるスパークリングワインは、きめの細かい泡が持ち味。
デキャンタージュしてしまうと、時間がたてばたつほど気泡が抜けて残念なことに。
ただの白ワインと変わらなくなっちゃうわね。
白ワインといえば、一般的に白ワインはデキャンタージュしません。
白ワインは、フルーティーな味わいと渋みが少ないのが特徴で、10度前後の低い温度で飲むのがおいしいもの。
ですので、渋みをやわらげたり、温度を上げる必要がないのです。
ただし、澱や還元臭が気になるときはデキャンタージュした方が良いでしょう。
デキャンタージュした方がいいワイン
白ワインは基本、デキャンタージュしません。
なので、デキャンタージュがおすすめなのは赤ワイン。
その中でも、次の3つはぜひデキャンタージュして飲んでください。
- 年代物で澱のあるワイン
- 少し古いボルドーワイン
- 南米やオーストラリアなどのカジュアルワイン
澱のあるワインはもちろん、有名なボルドー産で少し年代が古いワインも、デキャンタージュすることでまろやかで華やかな味と香りを楽しむことが出来ます。
カルフォルニアやチリ産、オーストラリア・ニュージーランド産のお手軽価格て購入できるカジュアルなワインも、デキャンタージュすれば熟成が進んでおいしく飲めますよ。
デキャンタージュの方法
ワインがおいしくなるデキャンタージュ。
自分でも、やってみたいですよね。
デキャンタージュの手順を紹介します。
始める前にやっておくべきこと
澱のあるワインをデキャンタージュする場合、ワインの中に漂っている澱をすべて底に沈めておく必要があります。
ワインを飲む7日~2日前から、ワインを立てて澱が完全に底に沈むのを待ちましょう。
暑い時期は、冷蔵庫に入れておくのがいいのですが、ボトルを立ててしまえない場合は、できるだけ暗くて涼しい場所を選んで置いてください。
ワインの栓を抜く
ワインを揺らさないようにコルクを静かに抜きます。
ボトルを回してしまうと、せっかく沈んだ澱が舞ってしまいますので、できるだけ動かさないように細心の注意を払いましょう。
ここが結構難しそう。
てこがついているタイプのワインオープナーを使うと、やりやすいですよ。
いざ、ワインの移し替え
ワインを利き手で持ち、ボトルの口元をデキャンタに入れて注ぎ始めます。
注ぎ方は、するすると静かに。
この時、ボトルは水平よりも傾けないように気をつけましょう。
ボトルの首の部分に、澱が見えてきたらすぐにデキャンタージュをやめます。
見えにくい時は、ワインの首の下あたりを、懐中電灯やろうそくなどの明かりで照らすと、澱が見えやすくなります。
ボトルの下3センチぐらいを目安に、ワインの透明な部分だけをデキャンタに移しましょう。
ふーっ。
お疲れさまでした。
澱のあるワインで紹介しましたが、澱のないものでも手順はほとんど変わりません。
澱がないからといって、デキャンタにドボドボ移し替えるのは、ワインにとって刺激が強すぎて、味も香りもどこかへ行ってしまいますので、静かに移し替えましょう。
デキャンタージュしたワインの飲み頃は
さて、無事デキャンタージュできたワインは、どのくらいで飲み頃になるのでしょう。
え。すぐ飲んじゃダメなの?
あのねー。
ワインをおいしくするためのデキャンタージュです。
出来れば一番おいしい頃合いに飲みたいですよね。
年代の新しいワインは、1~2時間ほど、古いものだと20分ほどで飲み頃になるといわれています。
ワインの年代によってかなり時間差があるので、新しいワインはお料理を作り始めるタイミング、古いワインはテーブルセッティングが済んだタイミングで、デキャンタージュするといいかもしれません。
冷えすぎたワインは、いい香りがしてきた時が頃合いね。
料理を食べながら、待ちましょう。
初心者向けデキャンタおすすめ3選
デキャンタージュに欠かせないのは、もちろんデキャンタ。
デキャンタージュする目的によって、その形状が違います。
目的にあったデキャンタを選ぶのも、おいしくワインを飲む秘訣です。
初心者でも扱いやすいデキャンタを紹介しましょう。
澱を除くデキャンタージュは細口タイプ
引用元:https://item.rakuten.co.jp/riedel/1480-13/
商品名 | リーデル RIEDEL デカンタ シラー |
容量 | 1040ml |
価格 | 楽天 5,887円~
ヤフー 5,887円~ Amazon 8,447円 (2020年2月26日現在) |
ワインの澱を取り除くためのデキャンタージュには、口の細いデキャンタがおすすめ。
もう十分熟成しているので、酸素に触れることが少ないデザインの物を選びましょう。
リーデルは、オーストリアの高級ワイングラスメーカー。
ワインのことをを知り尽くしたメーカのデキャンタの中でも、この「シラー」はビギナーにも使いやすいシンプルなデザイン。
マシンメイドなのでお値段もお手頃です。
香りを引き出すには底広タイプ
引用元:https://item.rakuten.co.jp/culticamo/4-1498-0301/
商品名 | ボルミオリ・ロッコ プレミアム デキャンター |
容量 | 1,930ml |
価格 | 楽天 6,578円~
ヤフー 5,449円~ Amazon 5,697 円 (2020年2月26日現在) |
若いワインの香りを引き出すためのデキャンタージュには、酸素にたくさん触れられる、ボディの底が広いタイプがおすすめ。
デキャンタージュした後に、軽く1~2回デキャンタを回す(スワリングという)と、ワインと酸素がよく混ざってより早く香りたちます。(※やり過ぎると逆効果ですのでご注意ください)
ボルミオリ・ロッコは、イタリアの老舗ガラスメーカー。
そのガラス職人とソムリエがタッグを組んで作り上げた、ワインの魅力を最大限に引き出すためのデキャンタです。
薄くて美しいクリスタルガラス製。
飽きの来ないデザインと、扱いやすさが特徴のデキャンタです。
熟成したワインには安定のダックタイプ
引用元:https://item.rakuten.co.jp/smartkitchen/10005852/
商品名 | プジョー RESEDA(レセダ) |
容量 | 1050ml |
価格 | 楽天 16,500円
ヤフー 15,277円~ Amazon 16,200円~ (2020年2月26日現在) |
熟成したワインは。できるだけ刺激を与えず静かにデキャンタージュしたいもの。
そんな時は、テーブルに置いたまま使える安定したデザイン「ダック」タイプのデキャンタがおすすめ。
自動車で有名なフランスのプジョーは、、ペッパーミルやウイスキー、ワイングッズでも評価の高いメーカーです。
この「レセダ」は、横長になりがちなダックタイプの中でもコンパクトなデザインで収納にも困りません。
口元にある黒いものは、ワインのしずくを受け止め吸収する「ドリップストッパー」。
テーブルを汚す心配なく、デキャンタージュできます。
デザインと機能性を兼ね備えたデキャンタです。
まとめ
ワインをもっとおいしく飲むための方法、デキャンタージュについて紹介しました。
渋くて飲みにくいワインを、まろやかな味に。
冷たくてあまり香りのないワインを、素敵な香りに戻すデキャンタージュ。
ちょっと残念なワインたちが、「こんなにおいしかったんだ。」と感動できるワインに変身します。
以前は、夫は白ワイン、私はロゼが好きでしたが、デキャンタージュを覚えた今では赤ワインもおいしく頂いてます。
お手頃価格のカジュアルワインが、デキャンタージュでワンランク上の味に。
なかなか、耳寄りな情報でしょ。
今年の結婚記念日は、リーズナブルなワインをデキャンタージュして、おうちディナーもいいかも。
浮いた予算は……うふふふ。