幼い頃のお正月、私はある疑問を持ちました。
(かまぼことか海老とか、いつもおせちに入ってる、なんでなんだろ)
我が家では毎年出てくるおせちの中身がほぼ同じでした。
我が家の場合、かまぼこ・海老・田作りのみのシンプルなおせち。
あとはウィンナーやハムなど、子どもが食べれそうなものを用意してくれてました。
大人になると料理を作る大変さがわかりますが、まだ幼かったのでわからず。
そこで、疑問に思った私は親に問いかけてみました。
「ねえ、なんでおせちの中身って毎回ほとんど同じなの?何か意味があるの?」
すると私の母はこういいました。
「知らないわよそんなの、私は忙しいからご飯食べてなさい」
そりゃそうです、そんなことを急に聞かれたら聞き流したくもなります。
幼かった私は大人の忙しさなど知る由もなく。
(教えてくれなかった…)と、しょんぼりしながらおせち料理を食べていた記憶があります。
そして時は現在に戻り、大人になった私は、この記事を書けることを喜びました。
(幼い頃に教えてくれなかった、おせちの中身の理由を知ることができるんだ!)
私は嬉々としておせちの具材の意味について調べ始めました。
すると、今まで知らなかったことがたくさん書かれていて驚きました。
(え?この食材ってこんな意味があるの?これって知らない人多いんじゃないかな)
家庭によって入っている具材、お重への入れ方は様々。
その食材のひとつひとつに、願いや思いが込められています。
その願いや思いを知れば、来年のおせちはもっと楽しめるはず。
今回はそんなおせちの具材の種類や、その思いなどを詳しく紹介していきます。
おせちの具材の入れ方にも意味がある
では早速、具材の紹介を…と行きたいところですが。
まずはおせちを華やかにしてくれる入れ物、重箱の話をしていきたいと思います。
あなたはおせちの具材の入れ方に、法則があるって知っていましたか?
4段の重箱で作っていく場合、一般的には画像のような順番で入れていきます。
ちなみに五段で作る場合、なんと五段目はからっぽで出します。
何故空っぽにするかというと、五の重は古くから「神様から授かる福を詰める場所」と言われているからです。
そのため五段重にする際は、五の重は空っぽにするか、家族が好きな食べ物だけを入れるのが主流になっています。
今回は4段のお重を例にして、順番にどんな食材を入れるのか紹介していきます。
一の重:祝い肴
一の重には、2種類の具材を盛りつけます。
その中でまずは、祝い肴を紹介していきます。
祝い肴とは、お祝いの際に出される酒の肴(つまみ)の事を言います。
「黒豆」「数の子」「田作り」は、おせちに入れる祝い肴の代表格ということで三つ肴とも呼ばれています。
黒豆
黒豆には、健康祈願・厄除け・長寿祈願の思いが込められています。
そもそも「まめ」という言葉は健康や丈夫といった意味合いがあります。
「黒く(日焼け)なるまでまめに働く」という言葉を黒豆に例えて、健康祈願の食べ物になったと言われています。
「黒豆を食べて1年間健康な体で暮らせますように」という思いが黒豆には込められています。
また黒豆の黒い色は邪気を払う色、魔除けの色と言われており、厄除けの食べ物ともいわれています。
そして、黒豆を煮る過程でふっくらとしたハリのある豆になるため「しわが寄らないように長生きできる」という意味合いもあります。
このように、黒豆には健康で長生きできますようにと願う意味が込められています。
数の子
数の子はニシンの卵の事、小さな粒々の卵がたくさん集まって出来ています。
そのため数の子は、子沢山に例えて子孫繁栄の意味が込められています。
また「ニシン」を「二親」とかけて、両親からたくさんの子供が生まれますようにという願いが込められているそうです。
数の子には子孫繁栄の意味合いもありますが、その黄金色の見た目から縁起物の意味合いもあります。
子孫繁栄と縁起物の意味合いが込められているなんて素敵ですね。
田作り・たたきごぼう
田作りには、五穀豊穣の思いが込められています。
五穀豊穣とは、農作物が豊富になることを指す言葉。
その昔、田作りに使われているカタクチイワシを、田んぼの肥料にしていたそうです。
すると五万俵もの稲が収穫でき、その出来事から五穀豊穣の食べ物と言われています。
我が家のおせちでも田作りが出ていました、子供ながらにそのおいしさにくぎ付けでした。
田作りをほおばる私を見て「渋いねえ」と、親戚の方によく言われてました。
この田作り好きが、私がお酒好きになる伏線だったのかもしれません。
また、関西では田作りの代わりに「たたきごぼう」を作るそうです。
たたきごぼうは、その名の通りごぼうを叩いて酢をあえたもののこと。
ごぼうは、根を深く張って育つことから「家や家族が丈夫であり続けますように」という願いが込められています。
また、ごぼうは細く長く育つため縁起がいいものと言われています。
一の重:口どり
一の重には、もう一つ大切なものを入れます、それが口どりです。
口どりは口どり肴の略称で、懐石料理などで酒の肴として出される甘いものを中心とした料理を指します。
一の重は、あまいものとしょっぱいものが程よい塩梅で入っており、食べる人を飽きさせない仕組みになっています。
口どりの中でもおせちによく入っているのが「かまぼこ」「伊達巻き」「昆布巻き」です。
紅白かまぼこ
おせちのかまぼこといえば紅白かまぼこ。
ピンク・白の色合いがかわいいですよね。
実はその色に意味があり、赤(ピンク)色が魔除けや喜び、白色が神聖・清浄の意味合いを持っています。
また、そのその色合いが初日の出に似ていることから、紅白かまぼこは縁起物の食べ物と言われています。
こちらも我が家のおせちでは毎年必ず出ていました。
ピンクと白の色合いがかわいくて、毎回喜んでいた記憶があります。
伊達巻き
甘くてふわふわな伊達巻。
伊達という言葉には、豪華・派手という意味を持っています。
豪華なという意味を持つ伊達巻も、門出を祝うおせちには欠かせない一品。
伊達巻の見た目が巻物に似ていることから、学問成就や文化の繁栄を願う食べ物と言われています。
昆布巻き
昆布はその昔「ひろめ」と呼ばれており、幅の広いことから「広布」と漢字で書き、その漢字を音読みにして「こんぶ」になったと言われています。
ちなみに結婚式などで使われる「お披露目」という言葉は、「ひろめ」からきていると言われているそうです。
その昆布には「こんぶ」という文字に「子布」と当て字をして、子孫繁栄の意味が込められています。
また、昆布と「喜ぶ」との語呂合わせから、縁起のいい食べ物と言われています。
昔の人も「昆布でよろこんぶ」とか言ってたのかな、と思うと面白いですね。
二の重:焼き物
二の重には、焼き物を入れます。
二の重はメインとなるお重で、海の幸を入れることが多いです。
「えび」「鯛」「ぶり」などが、二の重にはよく入っています。
えび
えびには様々な思いが込められています。
長いひげを生やした海老は、そのまがった背中の見た目をご老人に例えて「腰が曲がるまで長生きする」という長寿祈願の意味を持っています。
また、えびは脱皮をして成長することから、出世を願う食材と言われています。
もう一つ、えびのその色鮮やかな赤から、魔除けの意味も込められています。
我が家では海老を一匹丸々ではなく、小エビを甘辛く煮たものが出されていました。
こちらも大好物で、今でもあの味はお酒に絶対合うよなと思います。
小さい頃からお酒好きになる予兆はあったみたいです。
鯛
鯛は縁起のいいものとして、お祝いには欠かせない存在。
「鯛はめでたい」という語呂合わせで、おせちではよく使われています。
また、一般的な魚は短命なのに対し、鯛は40年以上生きることができます。
そのため長寿を願う意味でも縁起のいいものとされています。
ぶり
ぶりは出世魚と言われているため、出世を願う魚と言われています。
そもそも出世魚とは、稚魚から成長すると違う名前になる魚の事。
ぶりの場合、ワカナ・ハマチ・メジロなどを経てぶりになります。
ぶりが成長する前ってハマチだったんだ!と、とても驚きました。
三の重:煮物
三の重には煮物を入れていきます。
煮物は山の幸を使ったものを入れることが多いです。
おせちは海の幸・山の幸をバランスよく食べれるのがいいですね。
レンコン
レンコンは、包丁で切ると断面に穴が開いています。
その穴から「見通しがきく」「将来を見通せる」とされています。
そのためレンコンには「見通しのいい明るい一年が迎えられますように」という思いが込められています。
ちなみにおせちにレンコンを入れる際は「酢レンコン」を作るご家庭が多いです。
何故酢につけるかというと、レンコンは空気に触れると黒く変色してしまうからです。
そのためおせちに入れる際は、見栄えをよくするために酢レンコンを入れるのがメジャーになっています。
くわい
くわいは出世を願う食べ物と言われています。
その丸い塊茎から芽が伸びている姿が、芽が出ている(成長している)ように見える為、縁起のいい食べ物と言われています。
ところでくわいって何…?そう思ったあなた、安心してください。
私も調べるまで名前すら知りませんでした。
というよりも、親戚の家のおせちですら見たことありませんでした。
つまり存在すら知らず…無知な私はくわいの事も調べました。
くわいはオモダカ科の植物で、独特な苦みと、ホクホクとした食感が特徴です。
くわいは野菜の中でもタンパク質などの栄養素が豊富な食材です。
タンパク質のほかにも、高血圧を予防するカリウムや、味覚を正常に保つ亜鉛など、栄養素がたくさん含まれています。
縁起もよくて栄養もたっぷりなんて、女性は大喜びの野菜ですね。
ごぼう
ごぼうは先ほど登場した「たたきごぼう」と同じく、家族の健康を願う意味と縁起担ぎの意味を持っています。
ごぼうは、たたきごぼうの他にも「八幡巻き」というおせち料理に使われています。
八幡巻きの名前の由来は、ごぼうの産地である京都府八幡市から名前を取ったそうです。
ごぼうを牛肉やアナゴで巻いた八幡巻きは、濃い味わいでビールなどに合い絶品です。
与の重:酢の物・和え物
与の重には酢の物と和え物を入れていきます。
何故「四の重」じゃないの?と思われた方も多いはず。
四は死を連想させる数字として有名です、病院などでは四は使われないことが多いです。
縁起のいいおせちなのに四を入れたら縁起が悪いため「四の重」ではなく「与の重」と呼ばれています。
紅白なます
紅白なますは、大根とニンジンを酢漬けしたものです。
その形や色合いが「祝い事に用いる紅白の水引」に似ていると言われています。
水引とは、金封(冠婚葬祭の際に金銭を入れる袋)についている飾り紐の事です。
その水引に似ていることから、紅白なますは縁起のいい食べ物と言われています。
菊花かぶ
引用元:http://www.kikkoman.co.jp/homecook/search/recipe/00002488/index.html
菊花かぶ、見た目がとてもかわいいですよね。
菊は日本の国花と言われており、祝い事に欠かせない花であることから、繁栄や健康を願う花と言われています。
そのため菊に似せて作った菊花かぶは、縁起がいい為おせちによく入れられています。
また、邪気払いや長寿を意味する食べ物ともいわれています。
コハダの栗漬け
栗漬けはコハダを酢でしめて、クチナシで色付けした栗につけたもの。
コハダもブリと同じく出世魚であることから、出世祈願の意味合いがあります。
ちなみにコハダは、シンコ・コハダ・ナガズミ・コノシロの順に大きくなります。
また、栗には五穀豊穣の意味があり、こちらも縁起のいい食べ物です。
そのためコハダの栗漬けは、出世祈願・五穀豊穣の意味合いを持っています。
まとめ
おせちには様々な意味合いがあり、どれも縁起がいい食べ物ということがわかりましたね。
重箱ごとに入れるものの法則性があったのも、驚きでした。
健康長寿・出世祈願・五穀豊穣など、様々な思いがこもったおせちの具材。
改めてみると、おせちには野菜や魚などが均等に入ってて、栄養豊富な食材が多かったのも魅力でした。
今回私はおせちの事をたくさん知れて、とても楽しく記事を書くことができました。
そして、小さい頃の私にこう言いたいです。
「おせちって、縁起が良くて幸せになれる料理なんだよ」
後日、大人になった私は、母とランチに出かけた際に改めて聞いてみました。
「おせち料理には、全部の食材に意味があるって知ってた?」
すると母はこういいました。
「なにそれ、全然知らないわ、美味しけりゃ何でもいいじゃない」
…幼い頃の私へ、母はそもそも意味を知りませんでした、聞き損だったよ。
私は今回記事にした話を思い返しながら、おせちにはこんな有難い意味があるんだよ、と母に教えました。
「そうなのね、来年からおせちも少し楽しめそうだわ」
母も感心してくれて、なんだかうれしかったです。
毎年何となく食べていたおせちも、具材の意味を知れたので来年から楽しめそうです。
あなたもぜひ、来年はおせちを食べながら、今回の記事を思い出しておせちを楽しんでみてください。